習近平国家主席率いる中国に不穏な影が漂っている。国会に相当する年に1度の全国人民代表大会(全人代)が北京で行われているが、大会期間中のテロやクーデターの危険性が高まっているのだ。開幕直前には会場近くの天安門で不審な爆発が発生。先月行われた人民解放軍の再編が「習政権への反乱の芽を生みかねない」(専門家)との指摘もある。少数民族のウイグル族の一部勢力によるテロも危ぶまれており、治安当局は警戒を強めている。
全人代が開かれている人民大会堂。習氏ら中国共産党の幹部が集結する会場の目と鼻の先、天安門広場で緊張が走った。
3日夕方、花火のようなものが上がり、破裂音が2回して一時騒然となった。広場の北側に接する長安街沿いには、多くの警察車両が配置され、小銃を構えた迷彩服姿の隊員がにらみを利かせた。
習指導部は全人代前に一般市民を臨時警備要員として駆り出すなど警備体制を強化し、短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」の書き込みを制限するなど情報統制を強めている。治安当局が厳戒態勢を敷くなかで発生したこの“事件”は、独裁体制を強めようとする習指導部の不安定な立場を浮き彫りにした。
中国情勢に詳しい評論家の宮崎正弘氏は「権力の一極集中を進める習政権だが、テロやクーデターの懸念はいまだにくすぶっている」と指摘する。
習指導部は先月、人民解放軍の大規模な組織改革を発表した。
北京、瀋陽、蘭州、済南、成都、南京、広州の7つに分かれていた軍区を、東部、西部、南部、北部、中部の5つの戦区に再編したのだ。
情報筋によると、新たに成立した東部戦区(本部・南京)は日本や台湾方面の有事に備え、南部戦区(同・広州)は中国が軍事拠点化を進める南シナ海をカバー。北部戦区(同・瀋陽)は主にロシアと北朝鮮での軍事衝突を想定し、西部戦区(同・蘭州)は中央アジアなどのイスラム過激派のテロ活動などに備える。中部戦区(同・北京)は首都周辺の安全を守るためにあるという。
軍部の掌握を進めようとする習氏の思惑が透けてみえる施策だが、この軍部再編によって反乱のリスクがさらに増大する可能性がある。
宮崎氏は「習氏は、5大戦区の司令長官に自分の息がかかった者を配置しており、軍部の完全掌握を目指していたのは明白だ。ただ、この再編で軍人を30万人削減しなければならなくなり、退役軍人の処遇が問題となる。軍部内では待遇面での不満も広がっており、反乱の芽を生みかねない」と指摘し、続ける。
「特に危険視されるのが、昔から中央政府との対立が続いている旧瀋陽軍区を抱える北部戦区。それと、旧成都軍区と旧蘭州軍区を包括する西部戦区だ。ここにはかつてクーデターを企てて失脚した薄煕来・元重慶市党委書記の息が掛かった部隊が残っている。これから本格的な組織改編が行われるが、不安定な状況が続いている」
習指導部による厳しい弾圧政策への反発を募らせるウイグル族も暴発しかねない。
情報筋によれば、イスラム過激派と接点を持つウイグル族の一部勢力が、ミャンマーやタイなどを経由して、トルコからイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国(IS)」の勢力範囲であるシリア入りするケースが相次いでいるという。
「ISと結託したウイグル族の一部が、中国に戻ってテロを仕掛ける可能性もある」と宮崎氏。
全人代の会期は16日まで。習氏にとっては眠れぬ夜が続きそうだ
引用元:http://news.infoseek.co.jp/article/09fujizak20160309007/
トップページ